元プロロードレーサーで、現在はプロスポーツトレーナーや自転車のイベント・講習会などで活躍されている辻善光さんが、自ら企画した「自転車安全技術講習会」に参加してきました。場所は自転車の聖地競輪場「向日町競輪場」です。
今回の参加者は10名。天気予報は曇りでしたが、雨雲レーダーには映らないくらいの霧のような雨が降ったりやんだりな天気。天気がよければ競輪場のバンクの中は50度を越えることもあるというのですが、そんな天気のおかげでとてもすごしやすい1日となりました。
早速バンクの内側に入ると、バンクで先頭交代の練習をかねてのウォーミングアップ。その次に一本橋走行や、スラローム、段差を超える練習です。ロードバイクには何年も乗っていても、実際にこういった練習をしたことがある人って意外と少なくって、大人たちがワイワイ盛り上がって何度も練習を繰り返します。
ヒルクライムでタイムを縮めるのは年を重ねるとなかなか難しく、上達したという実感を得るのは至難の業ですよね。でもこういった初めてする動きの場合、驚くほど短時間で上達するんですよね。ほんの30分ほどで、最初の頃とは体の動きが全然変わってきます。
続いてレース中や車道走行中におこなう、危険回避テクニックの訓練。走行中に肩をわざと出して力を吸収させるのがポイント。ペアになり時速12~13キロのゆっくりとした速度で、お互いの肩をぶつけ合います。ハンドルや腕、腰に横から当たると簡単に転んでしまいますが、肩なら多少当たってもバランスを崩さずに耐えられるからあら不思議。出来れば使いたくないテクニックではありますが、体で知っているのと知らないのとでは、緊急時に生死をわることになるかもしれません。
普通に自転車に乗っているだけでは、絶対にこんな練習できないですよね。
競輪場での講習とはいっても、常にバンクを走っているわけではなりません。講習生たちが中で練習している間は、競輪選手やオリンピック代表選手がド迫力のダッシュを繰り返しています。これが自転車か!と思うような、爆音ですよ。
おおっと、この日本代表選手だけが着ることを許されるジャージで駆け抜けたのは、ロンドンオリンピックにも出場された前田佳代乃選手。世界レベルの走りを目の前で見られるなんて、すごくないですか?
すこし雨がきつくなってきたので、急遽室内の3本ローラーでのトレーニング。3本ローラーといっても市販しているものではなく、競輪選手が練習で使用するごついもの。ローラーの直径が巨大で、新円の精度も高く、地面に固定してあり手すりもあるという、競輪選手の全力もがきにも余裕でこたえる「本物」です。安定感がものすごく高いので、この日初めて3本ローラーに乗るという参加者の方でも、あっという間に乗りこなしていました。
3本ローラーを使用して、時速15キロ以下の超ゆっくりペースで走ってみたり、片足ペダリングをしたりして、脚を綺麗に丸く回す練習です。正面を見てという指示で顔をあげると、向かいの参加者と見つめあうことになり、照れ笑い。
「電動ローラー」ってご存知ですか?
ローラー台にスイッチが付いていて、自分で回るんです。さらに負荷も調整可能。これにスイッチを入れられたら最後、強制的に脚を回さないといけない恐ろしい練習機材なのです。もちろんギアが固定のピストバイクだからそうなるのですが、フリーギアのついたロードバイクだと、ただの自動走行ローラーなんですけど。
ここで、この日講師としてお手伝いいただいている畑段嵐士選手にデモ走行していただきました。10秒のもがきで あっという間に最高速度123km/hに到達。その瞬間ものすごい殺気のようなものが放たれ、真っ赤になってもがくのですが、終わって10秒もするとすぐに平常の表情に戻ってしまうのです。脚の高回転はもちろん、心肺機能の性能も凄いですね。
この日の参加者はレベルが高い! とおだてられ(?)、急遽ラストに予定にはなかった1kmタイムトライアルを行うことに。まさにドSな講習会。1周400メートルのバンクを一人で2周半走ります。1kmタイムトライアルの日本記録は1’00”017、世界記録は56秒303ということですが、どれくらいのタイムで走れるものでしょうか?
スタンディングスタートなのですが、贅沢にも武田哲二選手にサドルを持ってもらい、スタートの合図。ほとんどの参加者が初めて測る 1kmタイムトライアルだったのですが、なんて贅沢なんでしょう。
陸上でいうと400mに相当する、最初から最後までほぼ全力で走れる限界がこの1kmタイムトライアルということで、ペース配分無しでとにかく最初から全力でいけ!というありがたいアドバイスを受けて、スタート。
参加者の真剣な走りに刺激を受けたのか、急遽辻講師も挑戦! はたして記録は?
全員が走り終えてくたばっている間に、竹田選手、畑段選手、前田選手、そして2010年の賞金王、村上博幸選手と豪華選手が審議中。競輪選手ってごっつくて怖そうなイメージないですか? 全然そんなことないですから、凄く気さくなプロフェッショナルなアスリートですよ。
私もはじめての計測でしたが、6位/10人中の1分26秒19という実に平凡なタイム。走り終えると皆さん芝生にぐったり倒れこんで、内蔵が口から出てきそうな苦しみを楽しみました。トップのタイムは1分18秒、凄いです。突然決まったタイムトライアルでしたが、3選手の好意で豪華商品がプレゼントされました。
ちなみに1分20秒以下だと結構速いタイムらしいです。
私はこのレース後、競輪学校の願書を取り寄せるつもりでしたが、これできっぱりあきらめられます。
キニナル辻講師のタイムですが、なんと1分12秒。ウォーミングアップなしのロードバイクでこのタイムは凄い。すかさず現役3選手から、競輪学校への入部を進められていました。
そんな楽しい講座は12時過ぎには終了。
講習中の会話でもあったのですが、最近のロードレースでの落車が以前より増えてきているように思います。原因はきっぱりと、「ヘタなんです」と。
弱虫ペダルの効果でロードバイク人気が高まっているのはとても嬉しい事なのですが、普段ひとりや数人の友達とだけ走っている方がいきなりレースに出場するのはどうかと思います。私もこの2年ほど前までロードレースも楽しんでいましたが、毎回毎回落車や救急車を目にするため、正直今はもう出ようと思いません。家族持ちが遊びで怪我するわけにはいきませんから。その代わりに、輪行を組み合わせた気ままなソロライドや、ロングライドイベントへの参加、シクロクロスにシフトしています。
また、先日関西で行われたチームタイムトライアル競技(4人グループで先頭交代しながら時間差で順次スタートしていく競技)では、まったくローテーションが出来ない初心者の女性グループが参加されていたようです。同じグループの真剣な男子チームは時速50キロ以上、初心者チームは30キロ程度。女性グループはローテーションでもたつき併走したり中切れ・・・・ これではいくら競技場内とはいえ安全に走れるはずがありません。
レベルの違いすぎる参加者を同じ組で走らせる主催者側にも問題があるとは思います。格好から入ってもいいものと、ダメなものがありますからね。
まずは
- 蛇行しない
- まっすぐ走れる
- ローテーションが出来る
- コーナーではキープライン
- 不用意なブレーキをしない
- 集団走行が出来る
といったロードレースの基本は是非学んでからレースに挑戦していただきたいと思います。ワールドサイクルカップでいうと、計測しないカテゴリー6がオススメです。
こういった講習会って、実は全国各地で頻繁に行われているのですが、「存在を知らない」のかもしれません。購入していないショップ主催の講習会って、なかなか参加しずらいっていうのはよく分かります。そこで気を使わずに有料で参加できる講習会をご紹介します。
- 辻善光の「これで初級者は卒業、快適に乗るためのロードバイクフィッティング講座」 (7/4開催)
なんと今週開催されるじゃないですか! まだまだ間に合いますよ。 - ワールドサイクルの輪行講座・パンク修理講座(毎月開催)
- 第13回向日町トラックチャレンジ withふるさとアスリート キッズスクール 主催者: 辻善光(7/26)
- サイクリングツアーズジャパンの「サイクリング初級者講習会と体験会」(3/8 終了)
- サイクリングツアーズジャパンの「中級車の為のロードレーサー乗りこなしセミナー」(6/28 終了)
サイクリングツアーズジャパンでは、パッケージツアーのほかにも講習会も毎年開催しています。詳しくはウェブサイトをチェック
また一部の競輪場においても、ファン感謝イベント(計測会)というのを定期的に開催しています。お持ちのロードバイクで気軽にトラックを走って、計測することが出来ます。トラックの中ではコーナーと入ってもほぼ直線の感覚で走れますし、人数も多すぎない、変速でもたつくことも、ブレーキで急減速もありませんので、大人数で混走するロードレースより断然安全です。
- 関西トラックフェスタ
2015年4月5日(日)京都:京都向日町競輪場
2015年5月 6 日(祝)滋賀:旧・大津びわこ競輪場
2015年6月28 日(日)奈良:奈良競輪場
2015年7月12日(日)京都:京都向日町競輪場
2015年8月16日(日)滋賀:旧・大津びわこ競輪場
2015年9月13日(日)大阪:岸和田競輪場
最後に自分の身を守るのは、自分です。
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