2月の最後の週末、大阪からオレンジフェリーにのって、1泊2日でしまなみ海道・ゆめしま海道を走ってきました。私自身これが自転車では8回目のしまなみ海道サイクリング。昨年「村上海賊の娘」を読んだことで、日本の中世に瀬戸内海で活躍した水軍「村上海賊」の視点からしまなみ海道について新たな興味がわいてきました。そこで今回の目的は、第1に「村上水軍博物館と能島村上城のある宮窪瀬戸の潮流船」を体験する事、第2に昨年岩城島に上陸したのに何故か?登らなかった「岩城島(いわぎじま)の積善山(せきぜんさん)を登ること」。この2つを柱として、あとは行き当たりばったりで楽しんできました。
2月23日の午後8時、職場から直行でオレンジフェリーの乗り場である大阪南港フェリーターミナルに到着。ここにはターミナル内に輪行スペースがあるので、自走で来ても落ち着いて輪行できます。2日前にオレンジフェリーのサイクリングプラン(※1)を予約しているので、自転車は輪行袋に入れれば無料、2等寝台(二段ベット)の6人部屋で朝食付きで6000円(税込)。フェリーの中のお風呂に入って10時前には就寝。翌朝5時半に起きて、船内で朝食を食べたら下船です。(※1)サイクリングプランは前日までに予約(電話・ウェブ)が必要。当日申し込みはできません。
この日の船内には、輪行袋が私のを含めて4つ。東予港の輪行スペースは屋根はありますが屋外です。寒い中4人で輪行作業をしていると、他の3人さんは不慣れなようでクイックレバーの角度が真下を向いています。逆さまにして車輪をはめると、慣れない方はクイックレバーの角度にまで注意が届かないんですよね。輪行マイスターとしては当然3人分安全点検を行い、早速スタート。
すぐに女性サイクリストが最初の一歩の方角に迷っていたため、一緒に今治まで走ることに。彼女の最初の目的地は大島の「亀老山(きろうさん)」ということなので、山頂の展望台まで一緒に走ることに。4月から社会人になる学生さんで、今回しまなみ海道から宮島、広島市あたりを1週間ほどかけてサイクリングする計画なのだとか。長距離のサイクリング自体これが3回目で、輪行も初めて。出発前一度輪行の練習をしただけという。女性は勢いがよくて気持ちいいですよね。たまたま私の息子が通っている高校の先輩で、さらに息子の部活の顧問が彼女の担任だったりと、まさかの偶然にびっくり。
亀老山の展望台に上ると、来島海峡大橋が一望です。寒いので他に誰もいません。完全に貸し切りで景色を堪能した後は、女子大生さんと別れ、一人宮窪瀬戸を目指します。宮窪瀬戸からの潮流船は約1時間おきに二人以上の乗客がいれば運行します。村上水軍博物館を見学し、食堂で昼食の穴子丼をいただいて待っていると、12時の便に乗ることができました。ライフジャケットを着用して、能島村上城の周辺を約40分かけてクルーズ。一見穏やかな海なのに、約6時間おきに流れがの向きがかわる潮流、渦がぐるぐると巻いていたり、何とも不思議な感覚です。途中エンジンをわざと切って、船が潮の流れになすがままの状態になると、その流れの強さに怖さすら感じます。当時は潮の流れを読んで手こぎふねを自在に操ったといいますから、不思議な思いがします。潮流船に乗らないと感じることのできない感覚ですね。
大島の次は伯方島。ここには2つの展望台があります。まずは宝股山を目指して登ります。途中がけ崩れの工事をしている方に尋ねると、なんと上も崩れていて通れないよとのこと。そうは言われても自分の目で見てみないと気が済まないので、一部自転車を押しながら、行けるところまで行ってみました。すると途中完全に遊歩道が崩れており、普通に歩くだけでも不可能な箇所が。すごすごと降りてきて、先ほどの工事の方に「やっぱり無理でした….」と伝えて下山。
伯方島でのもう一つの目的地は、「伯方の塩ラーメン・さんわ」途中通学途中の女子中学生とすれ違う時に、元気に挨拶をしてくれました。うちの娘も中2ですが、えらい違いです。さんわさんのラーメンは優しい塩味で、ちょうどよい塩分補給となりました。
伯方島にはもう一つの展望台「開山公園」が。登ってみると山頂には六角形の綺麗な展望台が。大三島、多々羅大橋、生口島、伯方島、大島がぐるっと見渡せます。開山公園には展望台が3か所(開山展望台・開山公園・開山フラワーパーク)もあるんですね。そのすべてから眺めを堪能しました。
2時をまわり、そろそろ残り時間が短くなってきました。しまなみ海道のちょうど中間地点、多々羅しまなみ公園でお茶して、多々羅展望台で記念撮影。生口島はばびゅーんと飛ばして、洲江港からフェリーで岩城島の小漕港に上陸。岩城島にわたる橋はないので、渡船の利用客も多く活気があります。この時点で5時20分。日没は6時です。岩城島の積善山は諦めて、予約していた岩城港の「活魚民宿・よし正」さんに投宿。ここは昨年お昼をいただいたことがあります。お風呂には岩城島名物「レモン」が浮かんでいました。
ぐっすり眠って、翌朝8時に出発。積善山を目指します。いきなり20%を超えるきつい上り坂。そのあとは5~8%で山を回り込むように登ります。途中サイクルラック付の綺麗なトイレや遊歩道が整備されております。自転車は展望台の手前130mまでは行けますが、最後は担ぎ。開山のように丸い展望台に上って、びっくり。360度の大パノラマとはよく言いますが、ここは360度見渡す限りすべて島・海・潮流・橋・船。しまなみ海道の中では亀老山からの眺めがもっとも評価が高いといわれていますが、私的にはこちらの方が僅差で勝っていました。展望台のど真ん中にはライブカメラが備え付けてあり、ネットで見ると30秒間だけカメラの位置を変えることができます。するとリアルタイムで自分が写ってるんですよね。なかなか面白い! ここも貸し切りで誰も来ないので、30分以上一人で写真を撮ったり、景色を眺めていました。
島の北側に降りていると、巨石が見えます。近づいてみると、妙見神社の巨石とあります。私の家の近くにも妙見山というのがありますが、妙見って北極星に通じるらしくて、全国各地にあります。ここは巨石にしがみつくようにお堂が備え付けられており、修経場として使われているようです。
ゆめしま海道の4つの島の内、この岩城島だけ橋が架かっていません。2021年にかかる予定ですが、それまではフェリーが島の3つの港から出ています。積善山を下りきったら、岩城港から同じくゆめしま海道の弓削島に向かいます。フェリーを待っているとき、6人くらいの小学生たちが「俺レモン嫌いやねん、酸っぱいやろ~」って、ここはレモンで売っている島なんだから、大声で観光客の前でそれは言わんほうがえぇよ~ フェリーの中でもその子供達、「おちゃらかおちゃらかおちゃらかほい」って手遊びしてました。こういう昭和な感じがいい~んです。
弓削島では昨年の訪れた「しまでカフェ」で昼食。大きな鯛の摘み菜ランチをいただきました。弓削島は昨年一周したので今回はしませんでしたが、その時見落としていた「手作り信号機」を見に行きました。島には信号機が一つもないため、公園内に作ったそうです。もちろん光らない信号機です。
弓削島から橋を渡って佐島、さらに橋を渡って生名島に上陸。いずれも昨年一周したので、その時見落とした「三秀園のメンヒル」を見学。まぁ、でかい岩ですね。地上に出ているのは4.5mですが、地中に2.5m埋まっているそうです。いろいろいわれが書いてあって、読んでいると当時の様子が浮かんできて楽しくなります。
積善山からさんざん見えていた生口橋を渡って因島に。因島といえば「はっさく大福」。これを有名にしたのは「はっさく屋さん」ですが、他の和菓子屋さんでもはっさく大福は売られています。今回も比較にと、別のお店でもいただきましたが、やっぱりはっさく屋さんの圧勝でした。
あぁ~もうすぐ尾道についてしまいます。向島は都会とかわらぬ西側のブルーラインではなく、多少アップダウンはありますが、のんびりとしと港が続く東側のコースがお気に入り。西側を走るなら赤い橋を渡って岩子島一周がおすすめです。小舟が砂浜にぶら下がるように停泊しているビーチにある、黄色いブランコで最後のまったりタイムを過ごしてから、渡船で尾道に到着。
JR尾道駅で帰りの電車を調べると、45分後。輪行するだけなら時間を持て余すので、尾道をぶ~らぶら。20分前に尾道駅の輪行場所で輪行をして、最後のお土産を買って、JRに。福山で新幹線に乗り換え、6時半には自宅に到着。帰りはあっという間ですね。
今回の私の旅のスタイルは、ロードバイクに25cのパンクに強めのタイヤ、輪行袋はサドルにぶら下げ、30リットルのバックパックを背負いました。荷物の量としては、10Lのバックパックで十分なんですけど、しまなみ海道ですから、いろいろな種類のミカンを買って帰らないと。はっさく大福も買って帰らないと。というわけで二日目の後半はほとんど買い出し状態。去年はフェリーで一緒だったご夫婦にミカンをいただきましたし、おととしはお好み焼き屋さんでミカンもらいましたし。いつどこでミカンをもらうかわかりませんから、かばんは多めにってね。
残念ながら今年はそういうのはありませんでしたので、自分でみかん買いましたけど。デコポンが3個で180円とか、大阪ではありえませんから。
初めてしまなみ海道を走るのであれば、定番の最短コースがおすすめですが、そこだけでしまなみ海道をすべて楽しめたかというと、私的には、30%くらいじゃないかと思います。私が声を大にしていいたいのは、しまなみ海道のブルーラインだけで満足していたらあまりにももったいないという事。特にゆめしま海道は外せません。ゆめしま海道はしまなみ海道のちょうど真ん中にあって、包まれているように位置します。橋でつながっていないというだけで、ほぼ同じエリアです。逆に橋でつながっていないからこそ、昔ながらの渡船を利用した地元の方の生活にふれることができます。子供達も元気に挨拶してくれますしね。島=山ですから、景色の良いところに行くには上り坂が欠かせません。おすすめは、やまめの学校で自転車の乗り方を勉強して、筋力・パワーに頼った疲れる走り方ではなく、荷重移動を利用した楽な走り方をマスターすると、何十倍もサイクリングが楽しくなりますよ。
日帰りではなく最低でも一泊はして、それぞれの島の西側、東側、真ん中の山と最低3ルートは走ってみてください。海と潮流と島と橋と、地元の食材を使用した民宿や飲食店、そして渡船を利用してみてください。最近の自転車漫画では「仲間と一緒に」ってところが強調される傾向にありますが、それも一つの選択肢。同じくらい一人旅もいいですよ。話しかけやすい、話しかけられやすいので、思わぬ出会いがあるかもしれません。
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