仕事の都合でかれこれ15年ほど前から大体毎年台湾には来ているのですが、いつも台北市内のホテルと台北サイクルショーの会場までの往復ばかり。台湾観光も、台湾サイクリングもしたことがありません。パスポートには自転車大国「台湾」のスタンプばかり溜まっているのに、これではもったいない。数年前から映画やジャイアントの劉会長の影響で、台湾一周（環島ホァンダオ一周）が大ブーム。一周1200キロ、少し内回りで900キロという距離は、日本の九州とほぼ同程度。この距離を1週間から10日くらいでサイクリングするのが台湾のサイクリストや、外国人観光客に大人気というので、今回は台北サイクルショーに1日追加して、台北周辺サイクリングに挑戦してきました。

事前準備

サイクリングは1日だけなので、マイバイクはもっていかず、現地でレンタルすることに。ネットで情報を集めると、台北市内のジャイアントストアでロードバイクが借りられます。次にコースですが、ネットで探してもなかなかこれは！というものが見つからず、グーグルマップをじ～っと見てみると、台北市内の北側に陽明山という大きな山を発見。蒋介石が明代の学者王陽明を記念して名付けたといわれる陽明山国家公園です。標高も1000mくらいなので、関西人にとってはちょうど六甲山くらいとイメージできます。さぁどうやって攻めますか！　道が多く四方に広がっており、コース取りが無数にあり、逆に迷います。必ず定番と言われるコースがあるはずです。台北サイクルショーで詳しい方にいろいろ教えてもらい、国立故宮博物院の前を通るコースを教えてもらいました。よ～し、一旦登ってしまえば、あとは近場に降りて戻ってくるか、さらに遠くの方まで走ってくるかは、その時の気分で決めることにしました。

日本からは半そでジャージ上下とウィンドブレーカー、ヘルメット、SPDペダル、SPDシューズ、前後ライト、ボトル、携帯工具とパンク修理キットを持参しました。

レンタサイクルのお店は朝10時からなので、そんな時間から借りていたら1日を効率よく使えません。そこで前日の閉店前に借りることにしました。サイクリングの前日夜7時、台北駅近くのホテルから、予定していたジャイアントストアまではタクシーで10分ほど。ちょうどタクシーを降りたところに別の自転車店「崇越單車」を発見。見たところ80～90坪くらいとまずまずの広さで綺麗な店です。ロードバイクのレンタルがあるかと聞いてみたところ、「ある」と。値段を聞くと、ジャイアントストアよりもかなり安い。しかも副店長の石さんは日本語がお上手。念のためジャイアントストアにも行ってみましたが、事前にネットで調べた情報と全く同じ。これなら崇越單車のほうが条件がよいので、予定変更。持参したSPDペダルに付け替えてもらい、ハンドルを目いっぱい下げてもらうと、タイヤがチューブラーではありませんか！　カーボンのディープリムでかっこいいのですが、チューブラーの予備はもってきておりません。クリンチャーは無いかと尋ねたところ、「あるよ」。ブレーキシューもカーボン用だったので、それも交換してくれました。もともとの付属品はボトルケージが2個と、ハンドルにガーミンマウントでした。私も少し手伝いながら、手早く交換。パスポートを見せて、連絡用にLINEを交換して、手続き完了。支払いは返却時になるそうです。

ホテルのスタッフには、あらかじめ今晩レンタサイクルを借りてくるので中に入れてほしいと伝えておいたので、快くホテル内の談話室に置かせてくれました。

台北駅から故宮博物館 16km [地図で1の区間]

朝8時、ホテルのスタッフに見送られて出発。市内はモーターバイク軍団に紛れて信号でのストップ＆ゴーの繰り返し。ここで事故などするわけにはいきませんので、慎重に走ること約7～8キロ。台北市北側の基隆川のサイクリングロードに到着。市内ではロードバイクを1台しか見かけませんでしたが、流石に有名な台北のサイクリングロード。ロードバイクが沢山走っています。写真を撮りながら、陽明山の登り口の目印と聞いていた「国立故宮博物院」に到着。観光に来ていた台湾の高校生に写真を撮ってもらい、いざ陽明山へ。

 

故宮博物院から陽名山を登って金山 43km（累積59km）[地図で2の区間]

早速川沿いの登りが始まりました。釣り堀や川魚のお店が並んでいますが、まだ朝早いためか開いてはいませんでした。至善路三段から「陽明山」という看板に沿って左に曲がると、ズドーンと登りが始まります。斜度にして10%前後と思われるなかなかの坂です。南斜面にあるので日当たりもよく、登り初めの街が上からよく見えます。

途中でバイクを立てかけて写真を撮っていると、1台のタクシーがすぐ横に止まりました。中からおっちゃんが北京語か台湾語か何かで話しかけてくるので、「日本語でしゃべってくれ」というと、ホントに日本語で返してきました。見たところ70歳くらいなので、日本語が喋れる世代なんでしょうね。「英語がわかるか？」というので、「少し」と答えると、ガラケーの英語のメールを翻訳してくれとのこと。「Excuse me. Are you married?」って書いてあるので、「おっちゃんが結婚してるのか聞いてるわ。」って教えてあげたら、そうかそうかと喜んでました。何だったんでしょうね。キャバクラのお姉ちゃんからか？

坂道を登っていると、平日にも関わらずロードバイクで登る人、降りる人が結構います。土日の六甲山くらいでしょうか。皆さんぴちっとサイクルジャージに、高級そうなロードバイクです。途中休憩していた高校生っぽい男の子二人連れは、一人がピナレロにスラムe-tap、もう一人がフォーカスにデュラのR9100でした。

このあたりから、うわさに聞いていた恐ろしい出来事が起こり始めました。それは「野良犬」首輪はついているのですが、やせていて中型犬サイズ。色は真っ黒や黒と茶色のまだらだったりと、全くかわいい雰囲気ではありません。道路に寝そべっていたり、のそのそ歩いているんですよね。恐る恐る横を通るのですが、1回だけぼーっと走っていた時に追いかけられました。数メートルで諦めてくれるのですが、ちびりそうでした。この日だけで10匹以上の野良犬に会いました。

一度ぐ～っと登って、すこし下り、もう一度ぐ～っと登ると登山道の入り口らしき建物を発見。登山客というか、ハイキング客もたくさんいます。資料館もあって、陽明山の自然や歴史が展示されていました。日本語でも書かれていましたよ。

 

陽明山には温泉が湧き出ているので、常に硫黄の香りがします。ビジターセンターからさらに登ると、見晴らしの良いところに到着。記念撮影をしてまだお昼前だったので、このまま一気に北東の金山というところまで降りて、海岸線を反時計回りに台北市内に戻ることにしました。たぶん距離にして100キロちょっとくらいになりそうなので、時間も体力も問題なさそうです。これまで天気は良かったのですが、流石山の中です。ガスってきました。真っ白な中ウィンドブレーカーを着て、前後ライトをつけて、ダウンヒル。路面が濡れているのと舗装が日本ほどよくはないので、ゆっくり安全運転で下ります。下りきったらそこは金山市街。初めて台北に来た時のような雰囲気で、屋台が沢山あり人々の活気がありました。ここで昼食。適当なお店を見つけて、豚入り麺と鶏肉をいただきました。

金山から淡水 46km（累積105km）[地図で3の区間]

ここからは気持ちの良い海沿いロードです。道が広い、車も少ない、走りやすい。淡路島の西海岸のような雰囲気ですが、アップダウンが全然ありません。無茶苦茶気持ち良いです。お店など何も無いかと思っていましたが、モニュメント的な物や小さなお店が頻繁にあって、飽きることがありません。このペースだと3時くらいには戻ってしまいそうだったので、「金華山」という看板に向かって山を登ってみましたが、野良犬に追いかけられただけでした。

台湾の最北部から西側になると、徐々に海岸線を離れて内陸の道に代わり、車も増えてきました。ここでスペシャライズドにQ36.5のジャージでそろえた体つきが選手っぽいロードのり4人組がいたので、少しついて行くことに。途中で気が付かれたので、ニコッとしておいたのですが、あっさり信号無視して先に行かれてしまいました。実に堂々たる信号無視っぷりでした。

淡水から台北市内 24km（累積129km）[地図で4の区間]

台北市内からMRTの赤色（淡水信義理線）の終点「淡水（たんすい）」に到着。ここは都会ですね。台北市内のように車も信号も多い。台北市内からここまでサイクリングロードが伸びていて、市民の憩いの場になっているそうです。

早速サイクリングロードを走りだしました。どうも淡水から東側数キロはサイクリングロードとはいいつつも後から無理やりつなげるように付け足したような道で、細くて曲がりくねっていて、走りやすい区間ではないですね。赤い闘渡大橋を通って西側にわたると、気持ちの良い広いサイクリングロードになりました。途中公園の遊具があったり、自転車パーツを販売している露店なんかがあります。上半身裸でランニングをしている方や、サイクリングをしている方も大勢います。平日の昼下がり、のんびりした時間です。

日本のちょっと広い河川敷だと、ゴルフ場・野球場・サッカー場・テニス場、それらの駐車場などがありますが、こちらはちょっとした健康遊具のある公園と、バスケットコートくらいしかありません。あとは草っぱら。すごくのんび～りしています。

サイクリングロードも1本ではなく、2本～3本とあったりします。どこをどう走っても結局一緒なんです。

ぼや～っと走っていると、もうゴールです。ゴールはちょうどロードバイクを借りた自転車店のすぐ横です。ちょっとした広場になっていて、トイレや屋台、自転車パーツの露店などがあり、私もコーヒーを飲んで、しばしぼ～っと過ごしました。午後5時には、ロードバイクを返却して、代金を支払い、サイクリング終了。

右側通行といっても、すぐになれますし、車やバイクが多いとは言っても、市内だけの話です。山道になってしまえば、車も少なくあとは坂道を楽しむだけです。このコースの場合は途中お店もたくさんあるので、補給食を持つ必要もないくらい。

• スタート　午前8時
• 距離　127km　STRAVA（ストラバ）情報
• ゴール　4時過ぎ
• 高度　1809m
• 平均スピード　19.1km

地図はスマートフォンと日本出国時に借りておいたレンタルWiFiです。一番安い3Gでしたが、十分でした。空港やホテルでは無料WiFiがありますが、山の中ではレンタルWiFiが便利です。おおよその方角と全体的な地形・地名は予習しておけば、WiFiで現在位置がわかるので、あとは適当です。冬山登山でもありませんし、そんなに心配することもありません。中学生程度の英語で十分コミュニケーションは取れます。欧米人の英語と比べれば、断然聞き取りやすいですよ。3月末の気温は、12～25度前後。寒いと昼間20度以下、温かいと25度くらい。半そでジャージとアームカバーにウィンドブレーカーがあれば大丈夫でしょう。台北は台湾の中でも最も北なので、現地の方には寒い寒いといわれています。台中・台南と南に行けば、更に暖かくなります。もちろん雨は普通に降ります。

費用的には、大阪からなら新幹線で東京や九州に行くのと大差ありません。二泊三日あったら、台湾サイクリングってのも、いかがですか？

レンタルサイクル情報

崇越單車 大稻埕店
https://www.facebook.com/崇越單車-大稻埕店-206152656072512
1日1,000ドルが20%OFFで800ドル　前日の晩から借りても追加料金なし（日本円でおよそ3,056円）いつまで20%OFFかは不明。　※2017/3/24時点の価格・為替レート
※副店長の石さんは日本語オッケー！
■車種はグストのカーボンエアロロード他。コンポは105の11sなど。

跨越單車精品（ジャイアントストア）
https://www.facebook.com/cross25567630/
1日1,000ドル + 前日から借りる場合プラス200ドル　合計1200ドル（日本円でおよそ4,584円）　※2017/3/24時点の価格・の為替レート
■車種はジャイアントのカーボンエアロロード・プロペル他。コンポは105の11sなど。

物価の違いがありますので単純に比較するのは酷ですが、日本のジャイアントストアと台湾のジャイアントストアのレンタル価格を比較すると、ざっくり日本の半額ですね。
ジャイアントストア（日本）のレンタル価格
カーボンロードが1日7,000円。台湾だと1,000ドル（約3820円）　※2017/3/24時点の価格・の為替レート

※最新の店舗情報は、直接ご確認ください。本ページの情報は、2017年3月24日時点のものです。

陽明山の神の手って？

その後台湾にとても詳しい方からマル秘情報を教えていただきまし
た。陽明山にはすごく多くの道があるのですが、それらをうまくつなぐと、なんとお釈迦様の手の形になるというのです。それが、「神の手」

台北市内からおよそ160キロ、3,000Mアップというなかなかハードなコースです。これを制覇すると、「神」になれるそうですよ。挑戦してみては？