ロード選手が冬のトレーニングとして始めたといわれるシクロクロス。ドロップハンドルがついているので一見ロードバイクと思われますが、タイヤはロードバイクの約1.3~1.4倍の太さ、泥が詰まらないようにフレームとタイヤの間の隙間は広く、同じく泥が詰まりにくいように隙間の狭いキャリパーブレーキではなく昔のマウンテンバイクで主流だったカンチブレーキがつけられています。泥詰まりによる変速トラブルを避けるために、フロントギアをシングルにしたり、前後ともシングルギア(ただしトラック競技のように固定ギアではなく、フリーギア)も人気です。最近はディスクブレーキが主流となりつつあります。
コース上には強制的にバイクから降りて越えるような「シケイン」と呼ばれる障害物が設けられています。それは木で組まれた高さ40cmの板であったり、公園の階段だったり、どろどろのぐちゃぐちゃだったり、ふかふかの砂砂だったり。上級者はそれらをバイクを下りることなく華麗にクリアし、初級者はずるずる転びます。1日で、間近にどちらも観戦して楽しめるのも、シクロクロスの人気の理由です。
コースに直線部分は非常に少なく、ほとんどがコーナーで構成されています。そのコーナーも、グリップの高いアスファルトなどではありません。滑りやすい泥や砂、芝生や木の根っこ達、空気圧はクリンチャーでもチューブラーでも2barを超えることはそうそうありません。ロードバイクの1/3から1/4の空気圧しか入っていないのですよ。スムースにコーナーを曲がれないと、すぐにコースアウトしてしまったり、転んでしまいます。
出場クラスは細かく、成人男子で4クラス + 40歳以上のクラスが4クラス、女性3クラスにキッズ、ジュニアと細かくクラス分けされおります。出走人数にもよりますが、レースごとに上位1名か2名は昇格となり、次のレースから一つ上のカテゴリーで走ることになります。昇格があれば降格があります。シーズン通して残留基準をクリアできなかった選手は、次のシーズンは一つ下のクラスにエントリーすることになります。
上のクラス程競技時間は長く、男子クラスで上から60分、40分、30分、15分となります。周回コースでクラスによっては1分差スタートとなり、途中からどこが先頭かわからなくなることもありますが、ゼッケンの色でクラス分けしているので、慣れると大体わかるようになります。
私が関西シクロクロスに初めて出場したのは、およそ10年前。当時は三船選手もマトリックスパワータグ所属でしたし、竹ノ内選手は高校生。初レースは、パナレーサーのシクロクロスタイヤをつけた5万円ほどのシクロクロスバイクでした。始めて5年後くらいにC3からC2に昇格しましたが、2年目に残留できず降格。そのタイミングで40歳以上のマスタークラスに移りました。関西シクロクロスは年間およそ10戦開催されますが、私がエントリーするのは毎年3~5レースほど。子供達が小さい頃は、妻も一緒についてきて、キッズクラスで走らせたりしました。その二人も今や中学生と高校生になり、父親の願いなど全く考えてくれない年頃に….. たしかに朝は早いし、寒いし、自転車に興味が無いと辛いだけですよね….. 今でも会場を見渡すと、私と同じように一人で来られるマスタークラスのライダー達と、恋人や奥さん、小さなお子さん達を連れてこられるお父ちゃんが混ざり合っていて、様々な世代が自分のスタイルでシクロクロスを楽しんでいるのだなぁと感じます。
シクロクロスというと、泥や雨や雪や転ぶことが大好きのド変体?なんて言われることもあります。たしかにそういう一面もありますが、コースによって特徴があり、泥だらけにならないことも少なくありません。泥といっても程度もありますし、上級者程泥が付きにくいとも言えます。私が全戦エントリーしないのは、会場が遠いところと、できるだけ泥コースを避けている為です。
「転んで危ない!」と思われる方も多いのですが、落車すると硬いアスファルトにたたきつけられるロードレースと比べると、速度も遅く土や芝生の上に転ぶシクロクロスは、深刻な怪我(骨折が多い)になりにくいということもあります。
そういいながら、今シーズンの第2戦では、アスファルトの下り部分で落車してしまい、肩・肘・膝に大きな擦り傷を作ってしまいましたが……
私は、シクロクロスはバイクコントロールができているかどうかの判定機だと思っています。
不安定な路面の上を走れるのも、タイトなコーナーをスムースに曲がれるのも、これ全てバイクコントロール。交通ルールを守るのも、ライトをつけるのも、バイクを整備するのも、すべて怪我や事故を起こさずバイクを楽しむためのもの。でもそれだけでは不十分です。バイクを手足のようにコントロールしなければいけません。普通に公道を走っているときでも、段差があれば砂が浮いているときもあります。急な動きをする車や、交通ルールを守らない危険な他の自転車や、歩行者をよけるときもあります。雨の日のマンホールの上やグレーチングの上は、走り方によっては必ず転ぶ罠にもなります。
どんな時でもバランスを崩さずに、危険を予知し、避ける。これはバイクコントロールです。しかしながらロードバイクだけを乗っていると、ほとんどはきれいに舗装されたアスファルトの上ばかり走るものですから、危険に対する感度とテクニックが育たないんですよね。スクールに参加する年間走行距離が5000キロ以上にもなるホビーライダーでも、スラロームが段差越えなどが上手にできないのは、そのためです。
立ったままでは受け身の練習はできません。実際に倒れてみなければ、倒れたときのことはわかりません。倒れる直前の動きを感じなければいけません。でもアスファルトの上で倒れるのは嫌ですよね。シクロクロスの初級クラスで転んでいるのって、柔らかい泥や砂の上がほとんどで、しかも時速15キロも出ていないケースがほとんどです。だから転んでも笑っていられるし、楽しいんです。
後輪が滑る感覚、前輪が滑って流れる感覚、激坂を登り下りするテクニック、泥や砂でも走れるテクニック。順位や昇格に一喜一憂するのは楽しいですし、C4でもCM4でも、ラップされたって楽しいんですよね。その中でもちょっとづつテクニックをつかんで、成長していくのは、いくつになっても楽しいプロセスです。
子供のころ公園で後ろブレーキを思いっきり握ってドリフト跡を残していたあの感覚のまま、シクロクロスレースを楽しんでみてください。
上手く速く走れる方法、まぁ沢山ありますよね。バイクにお金をかけるのも良いですし、フィッティングを受けるのもよいでしょう。でもあれこれ試しすぎて、何を信じていいのかさっぱりわからないという方も少なくないと思います。私は去年まで砂のコースを半分も乗って走ることができませんでしたが、今年はかなりいい感じに乗ったまま走れています。その秘訣は、「やまめの学校」 たったそれだけです。
砂で乗れている人と、乗れてない人。
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